CXM-カスタマーエクスペリエンスマネジメントがもたらすもの
エクスポネンシャルな成長を支えるCX基盤 (Interop Tokyo 2017で話したことをまとめておくよ)
今日、メディアやコンサルティング企業、ITベンダーなど、多くの人たちがデジタルトランスフォーメーションについて、その重要性を語っています。一般に、デジタルトランスフォーメーションとは、デジタルの台頭により、企業やビジネスモデルが大きな変革を強いられるといった文意で使われることが多いように思います。ここで、重要なのは、エクスポネンシャルというキーワードです。
エクスポネンシャルとは、直訳すると「指数関数的」という意味ですが、近年では、指数関数のグラフが急上昇するカーブを描くように、飛躍的な発展を遂げる技術や企業を示す言葉として使われています。この言葉を改めて使い始めたのが、シンギュラリティ大学の創設者であるレイ カーツワイルであり、リニア―(線形的)との対比においてエクスポネンシャルを位置づけています。このエクスポネンシャルという言葉は、まさに“デジタル”に関わる世界で起こっている事柄を説明するのに役立つ考え方です。
例として、IoTを考えてみましょう。IoTとはInternet of Thingsでいわゆるネットに接続されたモノ(デバイス)を指します。Cisco Systemsの資料によると、2020年までに、IoTデバイスの数は500億を超えるという爆発的な成長を見せています。ウェアラブルデバイスだけではなく、家庭、交通、買い物、エンターテイメントなど人々の生活にかかわるあらゆる局面で、様々な機器やツールがネットワークとつながるようになると考えられており、これらが収集する情報は莫大なものになります。
もう一つの例として、ソーシャルメディアを挙げてみましょう。今日、30億人近い人たちが、FacebookやTwitterといったSNSを媒介して互いにつながっています。日本国内だけを見ても、Twitterで4,000万人、Facebookで2,800万人、LINEに至っては6,500万人がアクティブユーザーとして利用しています。しかも、SNSの利用者は、継続して増加しているのです。
こうした指数関数的に拡大し続けるデジタルな環境が何をもたらすのか。これは、量の変化から質の変化への転換という、大きなトランスフォーメーションにつながると考えています。
今日に至るまで、企業のITは企業の生産性向上を目的として活用されてきました。CRM、SCM、ERPといった基幹業務系、情報系アプリケーションがこれを支えていました。ところが、いま、大きな転換が起きようとしています。顧客やユーザーに関する膨大な情報がデジタルテクノロジーにより取得可能になったため、今までは企業を中心に構成されていたITを、顧客を中心に構成することが可能になりつつあるのです。IoTやセンサー、ソーシャルメディア、モバイルアプリなどから収集されたデータや情報を、既存の構造化データと組み合わせることにより、顧客の360°像をリアルタイムで描くことができる時代が到来しています。
私は、これこそがデジタルトランスフォーメーションだと考えます。すなわち、デジタル化の進展と浸透により、企業中心であったビジネスプロセスから、顧客中心のビジネスプロセスへの転換が可能になった。さらに、企業の競争優位の源泉も、生産性からカスタマーエクスペリエンスへと変わっていくと考えます。