CXM-カスタマーエクスペリエンスマネジメントがもたらすもの
エクスポネンシャルな成長を支えるCX基盤 (Interop Tokyo 2017で話したことをまとめておくよ その②)
M.E.ポーターは、企業の競争戦略を価格戦略、差別化戦略、集中戦略の3つに分類しました。これらはいずれも、特定の市場における他のプレイヤー(競合企業)との関係において成り立っています。しかし、カスタマーエクスペリエンスにおける競争はさらに過酷です。カスタマ― エクスペリエンスには、製品やサービスというボーダーはなく、ユーザーや顧客をどれだけ理解しているかという1点において横並びに比較されることになります。
近年、デジタル ディスラプターと称される企業―Amazon、Uber、Netflix、Airbnb、TESLAといった企業は、従来その領域に君臨していた企業とは全く異なるスピードで成長しています。その原動力は、FreeやShareに代表されるような新たなビジネスモデルだといわれます。しかし、その基盤には、カスタマーエクスペリエンスがあります。ユーザーとのつながりや評価の仕組みにより、カスタマーエクスペリエンスを洗練させ、ユーザーを拡大させてきたこれらの企業は、カスタマーエクスペリエンスにおいて既に百戦錬磨です。競争の領域を、企業中心から顧客中心へと転換させる企業は、こうしたデジタル ディスラプターたちと、顧客や見込み客を巡って戦うことになります。
カスタマーエクスペリエンスは、製品やサービスの戦いではありません。どれほどよい製品、サービスであっても、たった1つのカスタマーエクスペリエンス上のほころびから、悪い評判が席捲する可能性もあるのです。
ここで重要なポイントは、ユーザーや顧客が互いにつながっていること、その結果、ユーザーが企業やブランドより、大きな力を持っていることです。この結果、従来のエンタプライズ領域では見られなかったような混乱が市場で発生しているのです。
例えば、企業とのユーザーとのコミュニケーションは、ほんの10年ちょっと前まで、圧倒的に企業から市場への一方通行でした。双方向なコミュニケーションは、電話、eメール、郵便などに限定されていました。しかし、今日では、コミュニケーションチャネルを決めるのはユーザーです。ユーザーは従来型のチャネルと複数のソーシャルチャネルを使い分けており、その時々で最も相応しいチャネルをユーザーが指定するのです。
別な例としては、ユーザーは何を信じるか、以前ほどシンプルではなくなってきているということも挙げられます。企業・ブランドが発信する大量の情報に対し、口コミサイトに記載されている(知らない人の書いた)レビューが大きな意味を持つ場合も多々あります。
さらに、人口動態的観点から見れば、この傾向はますます強くなると考えられます。2020年にはデジタルネイティブな若者世代―ミレニアルズと呼ばれる世代が、労働人口の過半数に達します。
カスタマ―エクスペリエンスにおける競争で優位に立つためには、企業は、こうした、非エンタプライズ的な混乱を理解し、対応する術を持つ必要があります。
では、実際の経営者層は、こうした混乱に対し何をしようとしているのでしょうか。
ノースウェスタン大学ケロッグスクールの教授モハンソーニーが実施したサーベイによると、2017年のCMOのプライオリティは以下の3つ
- 従来型のアプローチにデジタル/ソーシャルを取り入れ、あらゆるチャネルで一貫したカスタマーエクスペリエンスを提供
- デマンドジェネレーション、リードフローの自動化により、MA投資を最大限に活用
- ソーシャル、アナリティクス、クリエイティブ、アドテク領域のポイントソリューションを統合しカスタマーデータハブを構築、より高度なキャンペーンを実現
このように、大企業のCMOであっても、今日の時代を生き延びるためには、マーケティングコミュニケーションから価値創造へとその役割を変化させ、売上増をけん引できるようなカスタマージャーニーの設計、カスタマーアナリティクスの実施、マーケティングオートメーションの管理に多くの時間と資源を費やすようになってきているのです。